ちょっと一服 小噺百話/北の美味いをお届けする【北加伊堂】

名うてのドン・ファンが風邪をひき、医者のところへやってきた。診察してもらいながら、自慢話をはじめた。
 「先生、あれはいい女でしてね。ふわーっとした金髪で、大きな瞳はエメラルド色、腰が締まってて、ヒップがこう盛りあがってまして・・・・・・・・シモーヌって名ですがね」
 医者が男をジロリと見ていった。
 「あなた、もう先は長くないようですな」
 「先生、ご冗談を、こんな風邪ぐらいで!」
 注射を打ちながら医者が答えた。
 「そりゃ、そうですがね。どうもわたしの妻のようですな、そのシモーヌって女は」


 ウガンダの農場主がえらい苦労して、サイを家の裏口から台所へ入れようとしていた。そこへ友達がやって来て、手伝い、二人してようやく、頑固なサイを電気レンジと冷蔵庫の間に引っ張り込んだ。
 「いやあ」と、友人は言って、ひたいの汗を拭いた。「えらい仕事だった。いったいなぜ、でかいサイをこんな狭いところへ入れなきゃならないんだ?」「そいつぁー、分かってもらえないだろうな」と農場主は言った。
 「分かってもらえるには、ぼくの女房と結婚しなくてはならんよ。あいつはもの凄くえらぶっていやがってね、なんでも知っているというんだ。
 ぼくが何か言うと、「ええ、そんなこと、とうに知っているわ」とくる。ベットの中で目新しい技巧の話をすれば、「ええ、そんなこと、とうに知っているわ」だ。
 今晩は、あいつが部屋に飛びこんで来て、「たいへん、あんた、台所にサイがいるのよ」って騒ぎ立てるだろう。そうしたら、ぼくは、おもむろに口からパイプを離してこう言うんだ。
 「ああ、そんなこと、とうに知っているよ」


 医者が低い声で何かを告げると、瀕死の大金持ちの枕元につめていた一族の人々は、静かに病室を出ていった。
 と、眼を開けた大金持ちが言った。「ありがとうござます。先生、わたしは助かったんでしょう?」「その通りです。あなたは峠を越えました。・・・・・・ですが、どうしてお分かりになったんです?」
 「みんなの病室を出る様子が、いかにも元気がなかったもんでね」


 ゴムのパチンコで鳥を取ることに異常に憑かれた偏執狂のニュマ氏がその種の病院に入院して4年余り、もうすっかり症状は良いように見えるのだが、これまでにも何回か院長が許可しようと思って、「退院して何をしますか?」と尋ねると、「まず、ゴムのパチンコで鳥を打ちます」と答えるので、いつも退院を伸ばしてきたのだった。
 だが、今度こそ正真正銘全快の様子。そこで院長がもう一度ニュマ氏を呼んで質問した。「退院して何をしますか?」「あの・・・・若い女をみつけます」
 院長はホッと安堵の胸を撫でおろして、「それからどうしますか?」「金を渡してボクの部屋にきてもらい、洋服を脱がせ・・・・・・」長い禁欲生活の後なら当然のことだ。
 院長はすっかり喜び、「それからどうします?」「スリップを脱がせ、パンティを脱がせ・・・・・」「それからどうします?」
 「パンティのゴムでパチンコをつくります」


 アフリカのジャングル。ジョーンズとスミスのふたりがテントの中でお互いにハンターの腕前を自慢しあっていた。
 その内、ジョーンズが、今からおれがライオンをしとめて来れるかどうか100ドル賭けないかと言った。
 スミスはその賭けを受けた。そしてじっと座って結果を待った。  およそ1時間が過ぎた。
 突然、1頭のライオンがテントの入口からヌーッと頭を突っ込んで言った。「ジョーンズって野郎知っているかい?」スミスは思わず後ずさりをしながら声を震わせて答えた。
 「ああ、もちろん知っているとも」、するとライオンが言った。
 「あいつは、あんたに100ドル借りが出来たぜ」


 8月10日、夕食後、船長とダンスを楽しむ、とてもハンサムな紳士。彼は私に愛を告白し、ぜひとも一夜を共にしたいと言う。もちろん拒絶。
 8月11日、今夜も船長とダンス。彼は再び愛を告白。人妻の身として、到底承服できない。
 8月12日、船長、またも苦しい胸のうちを告白。もし愛が受け入れられなければ、船を沈めてしまうとまで言う。
 ああ、神さま・・・・・。
 8月13日、快事なり。昨夜、私は、千人の乗客の命を救う。


 ここは、フランスの列車の中、紳士がひとり、さっきから、しきりにハンカチを鼻にあてがってクシャミを我慢している様子。
 向かいにすわった男が見るに見かねて、「もしもし、お風邪ですか?クシャミなら、どうぞご遠慮なく存分になさってください」
 「ご心配かけて申し訳ありませんが、クシャミが出たいわけではございません」
 「ほう?」「なんと申しょうか。実は、私、余儀ない用向きで二、三日家をあけなければなりませんが、愛妻と離れるのがつらくて、つらくて・・・・・。そこで、まぁ、旅行のあいだじゅう、こうやって愛する妻の匂いをかいでいるのです。
 私の妻がどんなに素晴らしい女か、失礼ですが、ちょっとこのハンカチをかいでごらんになればわかります」、こう言って相手の鼻先にハンカチを差し出した。
 相手の男はしばらくハンカチの匂いをかいでいたが、急にハッとして、
 「あ?、もしや、あなたは・・・・・・・デュポワさんではございませんか」


 女房に死なれたジャンが丘の上の墓地になきがらを埋めてひざまずいた。「カトリーヌ、お前は一人で行っちまったんだなぁ。オレはさびしくてたまらねぇ。ああ、もう一度生きかえって来ておくれ」
 折しも土の中ではモグラが散歩の真っ最中。もくもくと土が動いて盛り上がった。
 ジャンの驚くまいことか。
 「カ、カ、カトリーヌ。バカなまねはよせ。今のはほんの冗談だってば・・・・・・」


 あるパーティ会場に貴婦人がすばらしい毛皮のコートを着て出席した。すると出席者の一人が悲しそうな顔をして、「奥さま。私はその毛皮を見ていると、そのためにつらい思いをした動物のことを思い出して悲しくなりますよ」
 奥さまが憤然として答えた。
 「どこの、どなたか知りませんが、主人のことをそんなふうにおっしゃるなんて・・・・あんまりですわ


 若い夫が医者のところへ行かねばならなくなった。尾骨にひどい挫傷を負ったのだ。「どうしてこんなことになったのです?」と医者が尋ねた。男は少しどぎまぎしながら報告した。
 ハネムーンに、自分と妻はかなり激しく愛し合い、あるとき、玄関のじゅうたんの上で一儀に及んだ。その時小さなテーブルをひっくり返して、重い燭台がお尻の上に落ちてきた。こういう話だった。
 「いや、あなた」と、医者はあきれて言った。「それくらいで済んでよかったじゃありませか」「ええ」と、夫は当惑して言った。
 「もう3分早く落ちてきたら、私は頭蓋骨を骨折したでしょうね」


 「ねえ、君のことを思うと、ぼくは夜も眠れないくらいだってことを、お父さんにいってくれた?」「いったわよ」「じゃあ、ぼくたちの結婚、お父さんは許してくれそう?」
 「それが違うのよ、・・・・・お父さんたら、あなたをお父さんの会社の夜警に頼みたいって」


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